卒業式に向けて袴の歴史をご紹介
3月といえば卒業シーズンです。ここ金沢では、卒業式に学校から紅白饅頭が配られる慣わしがあったり、小学校などでは伝統工芸である九谷焼や加賀友禅で卒業制作をしたり、手作りした水引のコサージュで式に出席したり、土地柄を生かした卒業式が毎年行われています。
その卒業式に着る衣装として定番になっているのは袴姿ではないでしょうか。神妙な面持ちで学び舎の前に立ち卒業証書を抱えて記念写真を撮っていたのは一昔どころか何十年も前のはなし。最近では自撮り棒片手に思い思いのポーズで表情も豊かに、卒業式の風物詩ともいえる袴姿を写真に残そうとシャッターをきる姿が印象的です。その卒業式に出席する際に女性が着る衣装として一番多く選ばれているのはやはり袴といえるでしょう。お母さま世代が卒業を迎えた(私が卒業した)当時は、今と違い袴にはおしゃれな刺繍の飾りなどない無地の紺色、お着物も淡いピンク色が主流になっており、髪型もハーフアップがほとんどで、みな同じ後ろ姿だったのを思い出します。中には当時はやった「はいからさんが通る」という漫画の影響で、矢絣柄のお着物に袴とブーツといういで立ちの卒業生もいて、それが逆にとても新鮮だったのを覚えています。
最近の袴と着物の組み合わせは個を重んじる時代を反映してか、色・柄ともにとても個性的で華やかなものが多く選ぶのにも迷ってしまいますよね。
また、袴姿は大学の卒業式が定番になっていますが、最近では幼稚園や小学校の卒業式でも袴を着用して出席する児童も増えてきているようです。
そこで今回は、なぜ卒業式に袴を履くようになったのか、その由来や歴史についてご紹介します。
【袴の由来と歴史】
袴の歴史は古く、古墳時代にまでさかのぼります。その姿は太いズボンのような袴を身に着けた埴輪で知ることができます。平安時代になると、宮廷に仕えていた高い身分の女性たちが十二単の一部として袴を履くようになりました。身分や性別によってきびしく身なりが定められた江戸時代には、唯一宮廷の女官たちだけが着ることを許されていました。やがて明治に入ると、宮中の女官服に由来される女袴は、そのきちんとした身なりから学問の場にふさわしい女学生の制服として受け入れられます。これにより、当時の着物に帯という服装では、着崩れを心配したり動きづらかったりなど学業にも支障をきたすことから、機能性と優美さを併せもった女袴が女学生の間で人気となり、明治30年頃には、海老茶色の袴に革靴、庇(ひさし)髪にリボンという女学生の定番スタイルが出来上がりました。袴姿の女性たちは颯爽としていて自転車に乗ったりテニスをしたりと、それまでの女性たちでは考えられないほど生き生きとしていて活動的で、その姿は新しい時代を象徴する存在であったようです。明治から大正時代にかけて社会的にも注目を集めた女学生たちの袴姿でしたが、洋装が入ってくると時代の流れにおされ次第に消えていくことになります。こうして現在では卒業式に出席する女子学生が着用するものとして受け継がれています。
【卒業式にむけて】
オシャレ心を持つ女性は時代を超えても変わらないものですね。
歴史を知ると、袴を着用することに一層の誇りと喜びが生まれるのではないでしょうか。
キリッとしたスーツ姿も素敵ですが、当時の時代背景や女学生に思いを馳せながら、ぜひ大正ロマン気分を味わってください。
お気に入りの服装を身にまとって思い出に残る卒業式を迎えられることを願っています。
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